立冬なのに小春日和という季節感の混濁した都市。
東京から逃れるように移動する。1時間半の旅路。
気づけばもう11月末。あっという間だったというよりも空白の1年だった気がする。桜を見なかった春までの記憶は確かだが、夏や秋の記憶は曖昧なまま、無常にも時間だけが過ぎている。
新幹線を降りた瞬間、しんと冷える身体に失われた季節が取り戻される気がした。


12:30AM
イミグレ初回の1分自己紹介の記憶だけを頼りに田中さんを探す。
ただでさえ人の顔を覚えるのが苦手なのに、マスク社会ではもうお手上げだ。
ひとつしかないはずのロータリーで彷徨っているところをコニタンさんが見つけてくれる。やっと、田中さんとジビエさんと合流して、ナスバンの1日が始まった。
田中邸までは車で約30分。

1:00PM
夕飯の食材選びはジビエさんにお任せして、ローカルなスーパーならではの食材観察に勤しむ私たち。
まるごと一匹、破格で売られている立派なお魚。体長50cmはあっただろうか。
パレットに並ぶ根菜。やたらと種類豊富なパックうどん・・・etc
ジビエさんの頭の中には用意したメニューがあったのか?
その場で手に入る食材でのインプロビゼーションだったのだろうか?
3連休に帰省してご馳走を囲む家族も多いのだろう。家族団欒の温かい情景が思い浮かぶ休日のスーパー。

2:00PM
遠くに稜線を眺めながら、畑もしくは林の中を進む道。ポツポツ見える干し草ロール。
虹かかる空。
少し細い道を入ったかと思うと、突如姿を現わす田中邸。廃校の小学校の隣、忘れ去られた土地に、異世界が落ちてきたかのよう。
時空を超えた孤高を感じさせる佇まいにに圧倒されながら、敷地に足を踏み入れる。
誰にも踏み固められていない、ふかふかの落ち葉の絨毯。
キャンチレバーの構造は、古い日本家屋の梁のような、太い木が支えていることに気づく。途端に、ツリーハウスのような親しみを覚え、この建築の本当のスケール感が見えてくるのだった。


3:00PM
宮脇檀と彼の建築に捧げる冬支度が本日のメインイベント。
コニタンさんが準備して来てくれた花材でクリスマスリース作り。
生木とドライフルーツ、スパイスの香りに癒される。
まずは、1つの大きなリースを4人で囲み、無心になってグルーガンでデコレーションしていく。
巧くやることよりも、最近は成果物と同じくらい、その過程が重要な気がしている。
手を動かしてものを作るという、その行為そのものが純粋に何か一つのことに集中する、瞑想的な時間をもたらしてくれるから。ノイズの多い、常に誰かや何かとコネクトした世界から、一時的に接続を切るためのシンプルな手段なのかもしれない。
Φ25cm
- モミオレゴン
- ヒムロ
- ブルーアイス
- ユーカリ
- サンキライ

- アジサイ

- 唐辛子

- ペッパーベリー(アイボリー)

- スパイス(シナモンスティック、スターアニス)

- ワタカラ

- ドライフルーツ

- マツボックリ(一部、那須で採集)

- 銀杏の葉(田中邸で採集)

(みんなの作品は後編でご紹介・・・)


5:00PM
それぞれのリース作りに没頭していると、辺りはもう真っ暗に。
主屋に戻り、田中さんが炉を起こし、ジビエさんが自前の包丁の準備を始める。
酔っぱらってしまう前に、梯子を上って建築見学を・・・


家具やディテールに、手触り感ある暮らしのスケールを大事にしていることが伺える宮脇建築だが、直角の梯子・心もとない落下防止バー・ブラインドで仕切る脱衣所など、日常生活にはちょっと過酷かもしれない設えはモダニズムの建築らしい?(実際こどもの成長には、ほどよく危険のある住宅の方が良いという説もあるが)
炉を囲むように設計されたテーブルを囲みながら、一皿ずつゆっくりと料理がサーブされる。気分は完全にプライヴェートレストラン。

今回はシェフ役をお任せしてしまったが、ジビエさんもナスバンのお客なのでと、田中さんが椅子を勧める。宮脇さん自身も座りながら料理をしていたそうだ。
それもそのはず。ダイニングテーブルの高さ(約70cm)を優先したコンロは、通常のキッチンではありえないほど低いのだ。それに、コンロの真上まで降りてきたレンジフードのせいで、座ってしまうとキッチンに立つ人の顔はよく見えない。
建築やデザインが人の行動を規定することは、時に暴力的に感じられることもあるけど、ここでは、キッチンとしての機能より、ダイニングという暮しを優先させた設えによって「座る料理人」を誕生させた。いいデザイン。
- 柿とクリームチーズのサラダ
- 鯖のリエット

- 洋梨とルッコラのサラダ

- 真鯛とせりのカルパッチョ

- 里芋とゴルゴンゾーラチーズの春巻き

- きじと猪の水餃子、パクチー添え

- 豚バラ肉の粒マスタード挟み焼き

- ラップサンド(ジビエカレーも添えて)

食の話題を手がかりに、変化の中で生きること、変化を起こすこと、変化を楽しむこと・・・ 今後、何かふとした瞬間にこの晩のことを思い出すんだろうなという、色んなおしゃべりをしながら夜が更けていった。

0:00AM
エアベッドに、各々持参したシーツと枕カバーでベッドメイク。

順番にお風呂に入って就寝。
それでは、また明日。

後編に続く・・・